読書メモ『知的複眼思考法』
運動のお供に聴いている。たまにいくつかの本で複眼思考がどうたらと出てくることがあり、おそらくこの本が源流だと思うので読んでみることにした。
序章
地獄のような古臭いステレオタイプの話がいくつも出てきた(そういうステレオタイプについて立ち止まって考えるよう促す文脈で)。今の時代にも、後から見たらありえないと思うような思考や常識や偏見(偏見とすら思っていない)が当たり前のように受け入れられているものもあるんだろうなあと思った。
第一章
読書について。本に書かれた文章も、出版されるまでに色々書き直されたものであるという視点は確かに無かった。別の可能性があったこと、著者がどういう思いでその文章を選びとったのかを考える。
第二章
書くことで考えを深めていくことについて。本筋ではないけど、書き出すことで考えをまとめるのは大事。たびたび出てくる地獄のようなステレオタイプに対するコメントがハラハラする。
全体的に、高校生から大学生ぐらい向けの内容な感じがしている。
第三章
前半は、疑似相関を見分ける具体的な方法とか、ロジカルシンキングの基礎的な考え方とかの説明。やっぱり今となっては高校生・大学生1・2年生向けな内容な感じ。良く言えば基本的なことがしっかり解説されている。
後半は何気なく使っている概念の定義に意識的になることについて。基本的なことではあるけどそれをここまで丁寧に言語化しているのはとてもいいと思った。
残念ながらもうこの本が対象としている読者層には、この本に書かれている具体例はピンとこないものになっていそうだけど。(受験戦争、偏差値教育、男女差別、オウム真理教などなど)
第四章
前半は複眼思考を身につけるための方法論。着目する事柄そのものだけでなく関係論にも目を配る。『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を例に逆説的に関係を見る。施策の思わぬ副産物について考える。色々な着眼点が説明されている。
後半は問題の『作られ方』・提起のされ方によって扱われ方も違ってくることについて。いじめか傷害かみたいな。いわゆるフレーミングについて自覚的になろうみたいな感じ。
まとめ
高校生・大学生向けに、色々な着眼点で物事をみることについて丁寧に言語化して解説した本という感じだった。
著者の専門分野(社会学・教育学)と時代性から、受験戦争や就職難や男女差別やその他昔のステレオタイプの話などを引き合いに出した多く、実社会や仕事や経済周りの話は薄めだった。そういう意味でもバリバリのビジネスマン向けというよりは学生向けな感じだった。
今となってはこのぐらい注意深い物の見方は当たり前じゃないかとつい思ってしまうものの、そんな見方をきちんと若い人に向けて解説してくれている本というのも少ないので、そういう意味で貴重な良い本だと思った。
とはいえ上でも書いたけど、今どきの学生にこの本で引き合いに出されていることがどのくらいピンとくるのかと思う。それほど時代が変わってしまったことが印象に残った。そして今、当たり前にある考え方で二十年後、三十年後に見返して古臭すぎると思われるような考えもまたたくさんあるんだろうなあと思った。
そういった、もっともらしいように見えても一時の流行り廃りでしかない考え方に惑わされずに、何千年と経っても変わらず朽ちないようなものを追い求めていきたいと思った。
少し直してブログに上げてきた。 https://778a0a.hatenablog.com/entry/2024/12/08/134211